全体像とポジショニング
マーケティングの最初の段階(フロントエンドと言えるかな)では、
幅広い視点で全体像を考慮しなければならない。
つまり、マーケティングの「市場理解+ポジショニング」のフェーズにおいて、
世界的の全体像を検討しなければならない。
(参考:戦略的な選択と集中の結果はポジショニングである。
「ポジショニング」= マーケットでの位置付け/提供価値。
「ポジショニング Part 1」:こちら)
顧客が日本国内だけであっても、マーケティングはまず全体像(世界的)から始まる。
従って、マーケティングの最初の段階で、
「海外」と「日本」のような分け方をすることはあまり適切ではない。
海外ビジネスをやっていなくても、海外子会社を持っていなくても、最初に世界的な全体像を見なければならない。
(「全体像」の意味は特に物理的な、地域的なことではなく、例えば、分野全体のこと)
例として、レストランを考えてみたい。
西新宿にレストランをオープンするとする。
レストランは特にローカルなものだが、最初の段階で、
「市場理解+ポジショニング」のため、全体像(世界中)を考えなければならない。
例えば、レストランというものは何かを考えなければならない。
世界のレストランのトレンドや、食事のトレンド、エンターテインメントのトレンド等を理解して、考慮しなければならない。顧客のニーズも理解しなければならない。
レストランというものを再定義したくなるかもしれない。
この例で、全体像は「レストランというもの」とそのトレンドとニーズ。
そして、その全体像の中にどういうポジショニングを選択するかを決めなければならない。
できれば、自分の独自の付加価値、差別化を使えるポジショニングが必要。
例えば、
「楽しい、明るい雰囲気で、アートに端を発する料理」。
「高級ヘルシー」等。
ポジショニングを明確にしたら、次に現地の観点に注目できる。
例えば、三井ビルの人達がレストランのターゲット顧客かもしれない。
ターゲットがわかれば、自分のポジショニングや提供価値をターゲット顧客に説明できる。
半導体LSIビジネスの場合、
市場理解:
あるアプリケーションは勿論世界的なものなので、アプリケーションのLSIのため、まず世界中の全体像とトレンドを理解しなければならない。
ASICとカスタムLSIのトレンドもグローバルなので、全体像から始まる。例えば、ASICという分野はどうなっているか。
ポジショニング:
その全体像を見て、この分野に我々の差別化、儲かるところはどこか。どのところに、どうやって、中心するか。ポジショニングを決めなければならない。
(LSI Logic社がよくやっているのように)ある分野を再定義したくなるかもしれない。
アプリケーションLSIとしたら、その世界的な全体像の中のポジショニングを選択しなければならない(その全体像の中にある日本国内のニッチポジションも適切かもしれない)。
ASICポジショニングも全体像から選ばなければならない。
通常、全体像はグローバルなので、市場理解とポジショニングを行うために、
直接海外の人(海外子会社)と議論して、検討しなければならない(海外窓口部隊経由ではなく)。一緒に市場の全体像を理解して、一緒に全体像の中にポジショニングを選択しなければならない。
この「全体像」の考え方は、マーケティングと営業の違いの一つである。
つまり、必要なマーケティングマインドは営業マインドと異なる。
日本企業はポジショニングがあまりないとか、戦略があまりないと言われている。
その理由の一つは全体像をあまり見ていないということだ。
現場的かもしれないが、多くの場合、やや狭い観点から行動している。
例えば、日本国内の注目かもしれない。社内技術の注目かもしれない。
目の前の顧客への注目かもしれない。
全体像を自分の遊び場(playground)として捉え、
ポジショニングにより、全体像の被害者(Victim)にならないよう、全体像の中に自分の将来を明確にすれば、できるだけ、自分の運命をコントロールするようにできる。