混在しているビジネスモデル
まず、例えとして、スポーツをちょっと見てみよう。
野球選手は特定のスキルやトレーニングを集中して行う。
しかし、野球のベスト選手はベストサッカー選手にはなりえない。
たまに混在しているスポーツもある。
例えば、陸上競技には10種競技(decathlon)や、私が好きなトライアスロン等には複数スポーツが混在している(ポートフォリオスポーツと言えるかな)。
通常、それには一貫性がある。
しかし、例えば、重量挙げと水泳の組み合わせは通常見られない。
そのようなポートフォリオスポーツをやりたければ、トレードオフが必要だ。
10種競技に100mスプリントも入っているが、10種競技のベスト選手はベストスプリント選手にはなりえない。
つまり、選択と集中が必要。
必要なトレーニング(研究開発)、スキル、コンピテンス、食生活(リソース)、筋肉の使い方(やり方)等が全然違うからだ。
例えば、「相撲・シンクロナイズド・スイミング」というスポーツがあったら(あまり想像したくないけど)、
相撲・シンクのプロ選手は「相撲・シンク」の場では競争できるかもしれないが、
普通の相撲では多分競争できない。
シンクロでも競争できない。
選択の前に競争の場の状況を理解しなければならない。
同様に、一つ組織が複数ビジネスモデルを持っているとしたら、競争力が下がる。
添付資料の1ページ(こちら)に示したように、
あるビジネスを最適化するため、
ある特定カルチャー、マインド、ビジネスモデル、スキル、コンピテンス、リソース、やり方等が必要である。
1つ組織には戦略的な一貫性がない場合、
複数のビジネスモデルが混在しているであれば、
各ビジネスが最適化にはならない。
従って、各競争の場では競争力が下がる。
(その上、勿論、リソース不足になってしまう)
添付資料の2-5ページ(こちら)に半導体業界のそれぞれの「スポーツ」のビジネス構造をごく簡単で書いた。
市場によって、必要な注目、スキル、コンピテンス、リソースが違う。
例えば、NOR Flashメモリー市場を見れば、今までメモリープレーヤー(Samsung, Hynix等)はあまり入り込んではいなかった。しかし、メモリープレーヤーが入ったら、システムチッププレーヤー(Intel、AMD、STMicro)が競争出来なくなる。
ビジネスモデルが全然違うから。
ファウンドリにしても、ファウンドリベンダーのビジネスモデルが全然違うので、ベンチマーキングはあまり意味がないかもしれない。
20-30年前、「半導体」というスポーツがあったかもしれない。
今、それぞれ「アプリ」スポーツ、それぞれ「アナログ」スポーツ、それぞれ「デザイン」スポーツ、それぞれ「mixed-signal」スポーツ、「ファウンドリ」スポーツ等がある。
選んだスポーツによって、競争の場の条件を理解して、適切なトレーニングをしなければならない。
日本では「頑張る」と言葉をよく聞かれる。
しかし、頑張っても成功しないかもしれない。無理があるから。
野球選手がいくらか頑張っても、多分サッカープロ選手になれないでしょう。
複数のビジネスモデルが混ざっている場合、その「頑張る」は無駄になる。
他社のビジネスモデルとの競争で、コストダウンや、売上アップ等の対策は限界がある。
競争社は違うゲームをやっているから。
(戦略的な一貫性がない場合)複数のビジネスモデルが混ざっていると、勿論、ROIや、利益性が低くなる。赤字が出る。
私は企業の財務結果を見なくても、構造と組織だけを見れば、利益性を分かる。
皆はいつも私に「マークさん、我々日本人は戦略に弱い・・・」と言う。
しかし、去年のオリンピックの素晴らしい結果を見れば、日本はスポーツを理解しているように見える。競争の場の条件を理解しているようだ。
従って、戦略も理解できると思う。