構造的なシフト
社会の成熟度によって、人間・社員のニーズが変わる。
社会の成熟度によって、人間にとって、仕事の意義が変わる。
企業の成熟度によって、必要な対応が変わる。
時間と共に、世の中の変更と共に、
自然に社会と企業の構造変更の必要性がある。
オーストラリアの経験を見てみよう(米国、西ヨーロッパも似ている)。
1950年代、1960年代にオーストラリアが強い成長があって、豊富な時代だった。
オーストラリア、米国等で終身雇用が普通で、皆はずっと同じ会社に勤めた。「Organization Man(会社マン)」というものはその時代の代表的なイメージかな(図こちら)。
豊富な時代こそ、企業がお金持ちとなって、企業は段々幅広いビジネスに入った。
つまり、コングロマリット(複合企業)が誕生した。(ある意味で、「コングロマリット」は「お金持ち病」)。
結果的に、1970年代向けて、段々「大企業病」と「官僚制」が重くなった。
同時に、1970年代にオーストラリアに(米国、西ヨーロッパも同様)アジアから厳しい製造競争も入ってきた。
1980年代まで、オーストラリア、米国等で終身雇用が普通で、皆は多くの場合、ずっと同じ会社に勤めた。
しかし、「大企業病」や厳しいアジア競争で、沢山の企業がなくなった。以前の構造がちゃんと回らなくて、終身雇用の前提が段々崩れていった。
結局、アジアからの激しい競争によって、多くの人が仕事を失った。
そして、1980年代、オーストラリアの生き残った企業の組織変更も行われた。
企業は階層組織(ヒエラルキー)からよりフラットな組織に変更した。
特に、中間マネジャー層(middle managers)の必要性がなくなって、たくさんの40-50代の社員が仕事を失った。
この年齢の会社員は将来にかなり不安だった。
何十年、同じ会社に勤めて、
「この年齢でどうするの?!」のような気持ちを彼らの多くが持った。
勿論、最初に大変なショックになったが、
結局には、7割の人が以前より良い状況になったと判断した。
そのような人たちはまずい階層制度がある大企業から離れて、フリーダムのような気持ちを感じた。
会社の奴隷ではない、自分の価値とパッションを再発見したのだ。
彼らは自分のパッションを持って、新しい人生を始めた。
そのパッションと解放された知恵とによって、オーストラリアのビジネス環境も良くなった。
結局、肯定的な(positive)態度を持って臨めば、多くの場合、変更やシフトはliberating(解放的)なこととなるのである。
上記の企業トレンドや競争トレンドと同時に、世代のシフト及び、社会の成熟度のシフトも行った(図こちら)。
1960年代から若い世代が社会に出た。この世代が豊富な社会に育ったから、彼らはより高い社会成熟度を持っていった。
例えば、仕事をやる理由は彼らの親と違って、「食べ物」のためではなく、お金のためではなく、段々「自分の成長」のため、そして、「自己実現」のため。
社会の成熟度によって、自然に人生というものが変わる。人生の意義が変わる。人生の期待が変わる。仕事の意義も変わる。
従って、若い世代が前世代の会社マン(Organization Man)を許さなかった。大企業病を許せなかった。終身雇用を許さなかった。ずっと同じ会社に勤めることも許さなかった。
製造業が段々なくなったので、1980年代に入って、皆は段々knowledge workers(知識労働者)となった。
つまり、会社のアウトプットは社員の脳から。
結局、knowledge workはちょうど若い世代の成熟度に合った。
ロボットポイのOrganization Manに比べて、違う。社員は能力とパッションをかなり発揮した。
企業が段々社員の頭のフル能力とパッションを使って、アウトプットの価値アップや、生産性アップとなった。
「人間」は新しい経済パワーとなった。
結局、良いタイミングだった。
もの作りがなくなって、新しい競争力の源泉を探している企業にとって、ちょうどそのような社員が必要だった。
企業がその社員の新しい付加価値が求めていった。
企業が人間パワーに期待した。
1980年代から人間能力の中心時代に入った。
アウトプット、生産性アップ等は主に社員の脳からとなった。
厳しい70年代にニーズのギャップがあった(図こちら)が、
会社の構造変更と社員ニーズの変更がだいたい一致した。
何年間の厳しいギャップがあったが、タイミング的にそれぞれのシフトとトレンドがだいたい一致したので、よかった(ラッキーかも)。かなり自然にシフトを行った。
オーストラリア、米国、西ヨーロッパに比べて、日本は30-40年遅れで、似ているパスをたどっている。日本の場合もタイミングが大事。日本成熟度と共に若い日本人のニーズ変更、と企業構造の変更のタイミングが一致するかが大事。
余談として:
現在のような厳しい状況で、もの作りに注目している日本で工場や製造の中心となって、コストダウン、生産性アップのような対策。
現在、オーストラリアは相対的に元気(ビジネスは主にローカルなサービスだから)。
しかし、苦しい状況に入ったら、コストダウンやアウトプット価値アップや生産性アップ等の対策は社員の脳の対策となる。
もの作りがなくなったので、会社のアウトプットは社員の脳からだ(knowledge workersだから)。
つまり、日本と会社対応は全然違うが、将来的に日本もknowledge worker社会にシフトする。
心配なく、器機からよりも、人間からすごいことが出てくるから。
社会の成熟度と共に、
世代シフトと共に、
谷の向こう側に新たな将来がある。